2024 鍔 (勇士の鐔) 下地金(古金工/桃山?)・上塗り(黒漆/江戸期)

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縦約84ミリ✕横約80ミリ。重さ約158g。戦国時代の鐔を収集しているうち戦国熱が高じて、実戦の撃剣痕の付いた鐔を、なじみの刀剣店や骨董店に声をかけて、集めた時期がありました。そのときの1枚です。下地は波濤に桜散らしの古金工に、江戸期の黒漆が塗られています。鐔に実戦の刀傷が付くのは非常に稀です。それは合戦が鎌倉期が主に弓矢で、戦国期が鉄砲や槍によって、刀の斬り合い以前に勝負がつくことを考えれば、当り前かもしれません。この鐔は天地と片側の縁に6ヶ所の撃剣痕があります。ネットでたまに刀傷のある鐔を見かけますが、鐔に水平にまっすぐ押し当てたような跡や、柄が突き出しているはずの茎穴を横断していたりと、刀工が刀や鐔の強度を試したかのように、わざとつけたようなものもあります。 刀装具の老舗の方に鐔の刀傷についてお聞きしたところ、「物の溢れる豊かな現代と違って、当時は物をとても大事にした時代です。面白半分や自慢するための理由だけでは、刃毀れの危険までおかすような傷を鍔に入れないのでは」と、しごく真っ当なご意見を頂きました。写真の傷は明らかに当時のものですが、相手と6太刀も切り結ぶ戦闘は、前述のように戦国の合戦ではなく、新しい漆の上塗りからも江戸期、それも幕末あたりに路地や室内などの狭い空間の戦闘で付いたものではないかと想像されます。実戦では鍔の縁を欠け飛ばす勢いで刀が打ち込まれていることが、衝撃で剥落した漆跡からうかがえます。また実戦用の鍔が何より丈夫さを第一に優先されたことが、あえて美しい桜散らしの波模様を黒漆で塗りこめ、無愛想なまでに黒一色に仕上げていることからわかります。持ち主は常在戦場の精神で当時の風雲を生きていたのでしょう。その肝心な持ち主の運命ですが、剥落した漆を塗り直していないことから、勝負を制して再びこの鐔を使っていた可能性は低いと思われます。しかし事に当たって逃げることなく、数太刀も斬り結ぶ勇敢な武士道は、生きることに真剣だった時代の息吹を感じさせてくれます。人生の苦境に立たされたとき、勇気づけてくれる鐔です。鑑賞のための美術品としての価値は低いものの、そんな持ち主の勇魂に敬意を込めた価格にさせて頂きました。※値下げしました。

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